動物学者・日高敏隆について
さて、
今日あますいが紹介したいのは
鼻行類の話ではなくて、
この鼻行類の本を日本語に翻訳した
日高敏隆さんのこと。
大学の時からファンなんです。
ハラルト・シュテンプケの
『鼻行類ー新しく発見された哺乳類の構造と生活』は、
鼻で歩く「鼻行類」のについて
生物学的に考察した論文で、
当時これを読んだ研究者たちは
「なるほどそういう生き物がいたのか」
と信じたそうです。
・・・ん?
「信じた」?
そう、
この本。
学術形式の壮大なフィクション。
実際にいたドイツ人の動物学者、
ゲロルフ・シュタイナーというひとが書いた論文パロディ。だそう。
日高敏隆さんはこの本を日本語に訳すとき
「鼻行類なんてそんな実在しない動物のパロデイ本を訳してなんの意味があるのか」
と周りの学者から冷たい視線を浴びながら
翻訳を仕上げたという、
とても変わった動物学者。
さて。
日高氏の著書で、あますいが大好きな本
『世界をこんなふうに見てごらん』
という本があります。
この本のなかに
なぜ日高敏隆が『鼻行類』を翻訳したのか、
言及している箇所があり。
以下抜粋:
人間は理屈に従ってものを考えるので、
理屈が通ると実証されなくても信じてしまう。
実は人間の信じているものの大部分はそういうことではないだろうか。
人間の場合は、筋さえつけば現実に存在してしまうというところまでいくのが特徴だ。
鼻行類は、徹底的に理屈をこねるとほんとうに存在することになるという、よい例だろう。
理屈が通ると、つい腑に落としてしまう
人間の脳内トラップ
日高氏は、『鼻行類』の翻訳をすることで、
「論理性を突き詰めることが
客観的事実にたどり着ける道のりだとは
かぎらないよ。」
ということを
おちゃめなやり方で
日本人のわたしたちにも伝えたかったのかな、とおもいます。
「何が科学的かということとは別に、
まず、人間は論理が通じれば正しいと考えるほどバカであるという、
そのことを知っていることが大事だとおもう。」
・・・客観性の大親友、論理性が、
皮肉にも逆に足元をすくうパターンもあるよ。
トラップはそこらじゅうにあるよ、と
日高氏はわたしたちを優しく諭してくれてる
のではないでしょうか。